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経 営

             
転ばぬ先の知恵      第2回 過大投資 

           −ホントに投資してやっていけますか−
                              所長 木村哲三


 会社が大きく傾く原因で、最も多いのが過大投資です。

 売れる見込みでの新店の建設や店舗の大改修、増産見込みの高額な機械装置購入

や新工場の建設、新規事業への投資等々。それらの投資が主に借り入れによってい

るとき、見込みの売上が上がらないと、資金ショートし返済に窮して場合によって

は倒産します。

 稼いだお金を貯め込むばかりで、何ら新規事業のリハーサルをしない会社も、同

一事業が30年以上活況というのはまれなことなので、いつかは衰退します。会社

の内容が良いときにしか、損失の出るリハーサルはできません。リハーサルできな

い会社も困ったものですが、安易な過大投資は短期間で会社を消滅させます。


 過大投資に陥るわけは主に二つ。一つは、詰めの甘い売上予想からの新規投資。

もう一つは、売上の減少を食い止めるための起死回生の追加投資。

 前者は、店を新規に拡大すれば又はリニューアルすれば、あとこれだけ売上が上

がる、といった過去の経験からの売上予想で投資を誤ります。今、お店に来てくれ

ているお客様が、何に惹かれてきているかの分析を誤るケース。もともと、マーケ

ットが小さいのに、店を拡大又は店舗数を増やすと売上も上がるとの予想違い。売

上予想が困難な場合に、最悪のケースを考えずに投資額を決める。こういったこと

が、間違った投資の元です。


 徹底したシミュレーションで、最悪の事態にも耐えられる投資に抑えることが大

事です。新規事業として生鮮野菜に進出したユニクロは、予定の金額以上は投資せ

ず、撤退しました。新規事業がうまく行かなくても、本体はびくともしません。


 後者は、すでにそのマーケットは規模が縮小しているのに、それが判らず、追加

投資すれば売上が上がると誤認するケースが典型です。環境の変化に気が付かない

のです。


 こういった誤った投資をしないためには、マーケットの動向に常に注意すべきで

す。同業他社の売上が全て下降している業界は、特に追加投資はリスキーです。顧

客の嗜好の変化、顧客層の増減、関連する新発明にアンテナを立てておきます。

 半世紀前には活況を呈していた澱粉業もコーンスターチの登場で衰退し、その時

工場拡大の投資をしたこの地域の一番企業は消滅しました。それを見越して、元気

なときに他事業に進出した会社は生き残り、何社かは今日大きく成功しています。


 第二の柱になる事業を育てるためにリハーサルは大切です

 環境変化を注視し、シミュレーションを繰り返し、最悪のケースでも対応できる

金額に抑え、投資を成功させたいものです。            2005.6.20.


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