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経 営
眼鏡小売店の戦略
税経管理第8部 部長 角田
5、6月号の木村会計ニュースにて取り上げました「和菓子屋の戦略」に続きま
して、今回は「眼鏡小売業の戦略」を掲載致します。所長及び私をはじめ全部課長
にて、いかに眼鏡小売業の経営を成功させるかを検討しました。そこで出された意
見をご紹介させて頂きます。
1、眼鏡小売業界の動向
どの業界にも一貫して言えることではありますが、眼鏡小売業界も大手チェーン
店による低価格商品販売の影響は非常に大きい状況です。約10年前に低価格ショ
ップが出現した後の市場規模、眼鏡一式販売単価は大きく右下がり状況が続いてい
ます。また、眼鏡使用率の減少は見られませんが、人口減等により今後の見通しも、
非常に厳しい状況が続くと予想されます。
度入り眼鏡は単に仕入れて販売するのではなく、フレームとレンズが単体で流通
し、店内で検眼や加工、調整をして商品となります。いわば製品と言っても過言で
はなく、「世界に同じ眼鏡は二つない」とある経営者が仰っていましたが、同じフレ
ームとレンズを使って眼鏡を作る過程である検眼、加工等の技術の差によっては全
く違う製品が出来てしまうようです。最近は補聴器取扱店も増加し、より高度な技
術力や専門性が求められています。
2、顧客の視点
あるアンケート調査によりますと、眼鏡所有率は10代で約60%、年齢が上が
るにつれ増加し、60代以上では96%にも増加しています。所有本数についても、
若年層は少なく年齢が上がるにつれ複数本所有と増加傾向が見られます。
1本当たりの購入金額については、2万円以上が一番多く29%を占め、次いで1
万5千円から2万円が18%、1万円から1万5千円が15%と1万円以上が全体
の60%を占めているという結果でした。
またどこで購入しますか?の問いについては大手チェーン店、低価格ショップが
大多数を占め、眼鏡専門店での購入は14%ほどにすぎないという結果になってい
ます。
ただし、眼鏡購入時に重視するポイントは?の問いについては、価格と答えた人は
70%ほどですが、それを超える方がフレームの形や、顔とのバランス、つけ心地とい
った意見が多数あるようです。
毎日つける眼鏡(眼鏡は顔の一部?)であり低価格ショップで購入はするが、最終的
には購入者のこだわりを最重視しているように見受けられます。
また、若者には視力矯正は二の次でありファッションアイテムであるという結果も見
られました。
3、SWOT分析の活用
東総地区の一般的な眼鏡小売店のSWOT分析結果を紹介致します。
常に変動する業界動向をとらえ、経営環境や自社の現状把握をし、強みを伸ばし、弱み
を改善し続けることが重要です。
≪SWOT分析≫
内部環境自社の強み(Strength) | 内部環境自社の弱み(Weakness) |
有資格者の技術力、検査力(ない場合は弱み) | 立地条件(良い場合は強み) |
お客様へのおもてなし(悪い場合は弱み) | 駐車場廻りの狭さ(広い場合は強み) |
眼科医との提携(ない場合は弱み) | 特定社員以外の技術不足(人材あれば強み) |
補聴器専門資格(ない場合は弱み) | お得意様の高齢化 |
体験コーナーの設置(ない場合は弱み) | ファッションアドバイス力(良い場合は強み) |
外部環境の有利な機会(Opportunity) | 外部環境の不利な脅威(Threat) |
眼鏡専門コンサルタントとの連携 | 商圏 人口減少(東総地区の場合) |
眼鏡装着率には変更なし | 低価格・ワンプライスショップの出現 |
高齢化社会への対応 | 若年層のメガネファッション化 |
高品質志向 | 低価格志向 |
老眼眼鏡と補聴器のシナジー対応 | 視力矯正手術の進歩 |
4、戦略と方向性
現在、大手チェーン店の一部の企業は低価格商品の開発、拡販を進め業績を伸ばし続
けています。また人口減少や、低価格ショップの影響による販売単価の低下も中小眼鏡
小売店にとっては大きな脅威であります。
大手にはない技術力や専門知識を活用して差別化し、顧客一人一人への細かい提案、
またきめ細かなアフターサービスにより付加価値を上ることが今後の方向性であると
位置づけます。
5、もしも眼鏡小売業店の社長であったら
「もしも眼鏡小売店の社長であったら」のテーマで出た意見の一部を、ご紹介致しま
す。
・顧客数アップ策として、TPOに応じた2本目の眼鏡の推奨
・スポーツグラスなど他にはない商品の取り扱いとシーン別提案
・補聴器と老眼眼鏡の同時推奨販売
・補聴器について耳鼻科医との提携によるアンテナブースの構築
・地方産業祭の出店などの地域との密着サービスの実施
・出張無料体験会やお客様のご自宅での体験サービスの実施
・バーチャル試着の実施や1週間のお試しサービスの実施
・眼鏡、レンズの下取りサービス
・商品ごとの利益管理の実施
・視力回復教室や予防眼鏡などの視力回復につながる取り組み
・技術力やファッションアドバイスなどの更なる社員教育
・駐車場等入口の狭さの改善
・町の眼鏡屋さん的な存在であり、目や耳の何でも相談できる環境づくり
・固定費削減は急務 人件費一部歩合制、広告宣伝費の費用対効果
・HP、ブログ、Facebookの充実と今まで以上の活用
等
自社の強みの更なるステップアップや新顧客獲得へ向けての取り組み、新たなサービ
スの実施や、逆転の発想により視力回復への取り組み、自社の弱みの改善等の意見が出
ています。経営の参考にしていただければ幸いです。
今後も各業種別の経営戦略については、都度ご紹介させていただく予定です。
またご希望やご意見がありましたら各担当者までお知らせ下さい。
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