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労 務
−社会保険等の加入と外注(一人親方等)について−
税経管理第1部 部長 宇野澤
T 最近、社会保険の未加入の会社等に対して、加入するよう通知がきています。
会社は原則として、労働保険(雇用保険、労災保険)と社会保険(厚生年金保
険、健康保険)に加入しなければなりません。
法人等がこれらに加入すると、多額の保険料負担があり、経営に支障をきたす
恐れがあります。仮に、基本給月額29万円+通勤手当1万円の社員(30歳)を
雇用する場合の会社が負担する保険料は、532千円位になります。
(1) 例外的に被保険者とならない社員について検討してみます。
1. 雇用保険入
@ 65歳に達した日以後新たに雇用される者
A 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
B 継続して雇用される期間が31日未満である者
2. 厚生年金保険
@ 70歳以上の者
A 所定労働時間及び所定労働日数が、通常の社員のおおむね4分の3未満(定時
が週40時間であれば、週30時間未満)の者
B 2ケ月以内の期間を定めて雇用される者
3. 健康保険
@ 後期高齢者医療の被保険者(75歳以上の者等)
A 所定労働時間及び所定労働日数が、通常の社員のおおむね4分の3未満(定時
が週40時間であれば、週30時間未満)の者
B 2ケ月以内の期間を定めて雇用される者
4. 労災保険
原則として、同居の親族を除く全ての者が適用
(2) 次に適正に社会保険等に加入しないで済む方法について検討します。
社会保険の加入は、勤務時間と勤務期間によって決まります。
1. 勤務時間で調整する。 期間は長期とする。
@ 1日6時間の仕事を週3日以内の労働(6h×3日=18h)…雇用保険・健康
保険・厚生年金保険に加入する必要はありません。
A 同上で週4日の労働(6h×4日=24h)…雇用保険のみの加入となります。
B 同上で週5日の労働(6h×5日=30h)…雇用、健保・厚生年金全て加入する。
2. 勤務期間で調整する。
この場合は、短期(2ケ月以内)で働く以外に方法はありません。
継続的に働くには、入社・退社を繰り返すという事になります。
(3)社会保険等に加入しないで済む具体的な契約について検討します。
1. 月の労働日数及び1日又は1週間の労働時間が正社員の4分の3未満の場合
正社員が月20日・1日8時間労働の場合に、社会保険に加入しない方法、
月の労働日数15日以上 1日の労働時間6時間未満の場合は、加入できない。
同上 15日未満 同上 6時間以上 加入できない
同上 15日未満 同上 6時間未満 加入できない
* すなわち、月15日以上と1日6時間以上の2つの条件を満たしていると加入義
務があります。
2. 労働契約の期間が2ケ月以内の場合
この場合、社会保険には入れません。社会保険に加入しなくてよいのは、最初
の2ケ月だけです。2ケ月後、新たに1ケ月の契約を結んでも、入社からカウント
して3ケ月なので、社会保険に加入することになります。
以上、時間と期間によって、加入する・しないが決まってきますが。
次に、もう一つの方法として、外注(一人親方等)扱いにして、社員から抜いて
しまう方法です。
但し、税務上、いくつかの問題もあり、税務調査のときは、外注としての条件
を満たしているか、必ず調べられます。
また、外注者は収入を売上高として確定申告をする必要があり、所得税の申告
の有無も確認されます。
U 外注(一人親方等)
(1) 一人親方等に対して「外注費」処理をしていて、「給与」であるとして修正
を受けた場合、次の課税が発生します。
@ 消費税の仕入控除の否認(外注=課税仕入れ→給与=不課税仕入れ)
A 給与としての源泉所得税の徴収洩れ
不納付加算税、延滞税等の付帯税の発生
(2) 「外注費(事業所得)」と[給与(給与所得)]の判定基準。
外注費は「請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務提供の対
価」
請負(民法632条)とは…当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相
手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、そ
の効力を生ずる。
給与は「雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務提供の対価」
雇用(民法623条)とは…当事者の一方が相手方に対して労働に従事すること
を約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、そ
の効力を生ずる。
(3) 実質基準での判定。―外注費か給与かの判定―
@ その契約に係る役務の提供に、他人が代替して業務の遂行、役務の提供が
可能と認められる場合――外注費
A 報酬の支払者から作業時間を指定されるなどの時間的拘束を受ける場合―
―給与。
B 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受ける場
合――給与。
C まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等において、
自らの権利として既に提供した役務に係る報酬の請求ができる場合ーー給与。
D 役務の提供に係る材料又は用具等の供与を受ける場合−−給与。
(4) 個人事業者と給与所得者の区分(消費税法基本通達1−1−1)
事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が
雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、他の者の計算
により行われる事業に役務を提供みする場合は、事業に該当しない。
したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、
また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受
けた役務の提供の対価が出来高払いの給与であるか、請負による報酬であるかの区
分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによる。
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