前のページへ
The Limit
of The Sky No.110 Page 3
次のページへ
税 務
転ばぬ先の知恵 第5回 事業承継対策
−創業者の会社への貸金の評価を下げ、
同時に後継者の支配権を確立する法−
所長 木村哲三
創業社長が会社を発展させるために私財を全て会社につぎ込み、決算書を
見ると創業者の貸付金が膨大な額に上っているケースはよくあります。創業
者の会社の持ち株はもちろん、会社に対する貸付金も創業者の相続財産にな
ります。しかも、株式の評価と違い、貸付金の場合は、その評価はその貸金
の額そのままです。債務超過の会社では、株式の評価は初期の投資額より下
がりますが、貸付金はその会社が債務超過であろうとそのままの評価です。
創業者の会社に対する貸付金を債務超過の会社の株式に換えると、一般的
には評価が下がります。この評価減を利用して、相続税額を引き下げる事が
出来ます。
貸付金を資本金に組み入れる。貸付金を一旦銀行借入等で返済し、返済し
た額を出資してもらう。こういった方法で貸付金を資本金及び資本準備金に
変換します。増加資本金には0.7%の登録免許税がかかり、出資額の半分以上
は資本金にしなくてはなりません。出資額の半分は資本金、残り半分は資本
準備金とすることで登録免許税が半減します。
貸付金を株式にすると、相続人が複数いる場合には、株が分散し、会社の
意志決定が後継者の意志で出来なくなる可能性が残ります。会社を引き継ぐ
後継者が決まっている場合でも、創業者の株式持ち分が多く、複数の相続人
が権利を主張するようなケースでは、経営の継続が難しくなります。
こういった事態を避けるには、無議決権株式の利用が有効です。
株式譲渡制限会社の場合には、今回の会社法の改正で無議決権株式の発行
限度の制限が無くなりました。
相続前に、後継者に普通株式を贈与し、それ以外の株式は全て無議決権株
式にしてしまえばいいわけです。これにより、いざ相続となって株の相続を
他の相続人が要求しても、企業の支配権は揺らぎません。無議決権株式をい
くら相続しても、総会決議に何らの影響も与えられないからです。こういっ
た無議決権株式では、相続しても納税だけ迫られるので、後継者以外の相続
人は株式を相続する意欲もなくなるでしょう。
事業承継は適切になされ、経営は安定します。
無議決権株式の発行には、定款変更のための株主総会の特別決議が必要で
す。創業者の生前に、定款変更し、無議決権株式を発行しておくことがポイ
ントです。 20060815
前のページへ The Limit of The Sky No.110 Page 3 次のページへ