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税 務

           
転ばぬ先の知恵  第5回 事業承継対策

   −創業者の会社への貸金の評価を下げ、

          同時に後継者の支配権を確立する法−

                          所長 木村哲三


 創業社長が会社を発展させるために私財を全て会社につぎ込み、決算書を

見ると創業者の貸付金が膨大な額に上っているケースはよくあります。創業

者の会社の持ち株はもちろん、会社に対する貸付金も創業者の相続財産にな

ります。しかも、株式の評価と違い、貸付金の場合は、その評価はその貸金

の額そのままです。債務超過の会社では、株式の評価は初期の投資額より下

がりますが、貸付金はその会社が債務超過であろうとそのままの評価です。


 創業者の会社に対する貸付金を債務超過の会社の株式に換えると、一般的

には評価が下がります。この評価減を利用して、相続税額を引き下げる事が

出来ます。

 貸付金を資本金に組み入れる。貸付金を一旦銀行借入等で返済し、返済し

た額を出資してもらう。こういった方法で貸付金を資本金及び資本準備金に

変換します。増加資本金には0.7%の登録免許税がかかり、出資額の半分以上

は資本金にしなくてはなりません。出資額の半分は資本金、残り半分は資本

準備金とすることで登録免許税が半減します。


 貸付金を株式にすると、相続人が複数いる場合には、株が分散し、会社の

意志決定が後継者の意志で出来なくなる可能性が残ります。会社を引き継ぐ

後継者が決まっている場合でも、創業者の株式持ち分が多く、複数の相続人

が権利を主張するようなケースでは、経営の継続が難しくなります。


 こういった事態を避けるには、無議決権株式の利用が有効です。

 株式譲渡制限会社の場合には、今回の会社法の改正で無議決権株式の発行

限度の制限が無くなりました。

 相続前に、後継者に普通株式を贈与し、それ以外の株式は全て無議決権株

式にしてしまえばいいわけです。これにより、いざ相続となって株の相続を

他の相続人が要求しても、企業の支配権は揺らぎません。無議決権株式をい

くら相続しても、総会決議に何らの影響も与えられないからです。こういっ

た無議決権株式では、相続しても納税だけ迫られるので、後継者以外の相続

人は株式を相続する意欲もなくなるでしょう。

 事業承継は適切になされ、経営は安定します。

 無議決権株式の発行には、定款変更のための株主総会の特別決議が必要で

す。創業者の生前に、定款変更し、無議決権株式を発行しておくことがポイ

ントです。                       20060815



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