インボイス制度のおさらい
インボイス制度が導入される前、今まで消費税の納税義務の無かった売上規模が一定額に満たない事業者の方々は、インボイス発行事業者になるか否かについて大分迷われたのではないでしょうか?
インボイスを発行する事が出来なければ、取引先から排除されてしまう事も考えられます。消費税の課税事業者でなければ、インボイスを発行出来ない為に、あえて消費税の課税事業者となり消費税の納税義務が生じてもインボイス発行事業者になるという厳しい選択を迫られました。
おまけに消費税の課税事業者となれば、事務負担も増えますし、今迄納める必要の無かった消費税の納税義務も生じます。
それぞれの事業者の方の売上の相手先が一般消費者のみであれば、取引先がインボイスを必要としないので、あえてインボイス発行事業者として登録する必要はないですから、これまで通り消費税免税事業者のままで何ら問題ありません。
仮にインボイスを必要としている人と取引をしている場合であっても、そうした人の占める割合が少ない場合、そこは交渉次第で、必要とする取引先についてのみを値引きで対応するなどの方法で消費税免税事業者のまま乗り切る事も可能です。ケースバイケースで、その方が有利な場合もあります。
インボイス発行事業者として登録して貰いたい政府は、登録する人が伸び悩んだ為、色々と考えて何とか登録者数を伸ばそうとしました。やむを得ず、インボイス発行事業者となった方々にも期間限定で次の様な軽減措置が設けられています。
負担軽減措置 事業者向け
- ●消費税負担を軽減出来る2割特例(令和8年9月30日まで)⇒従来の負担軽減策としては、簡易課税制度というものがある。
- ●事務負担を軽減出来る少額特例(令和11年9月30日まで)
- ●少額の値引き・返品による返還インボイスの交付免除(期限なし)
経過措置 取引先向け
- ●仕入税額控除の経過措置(令和11年9月30日まで)
免税事業者から物品購入した場合であっても、当初3年間80%、以後3年間は50%仕入税額控除が可能であるが、期間限定の為免税事業者は再検討する必要がある。
【免税事業者の2割特例とは?】
- ●免税事業者がインボイス発行事業者になる場合
- ●インボイス制度開始から3年の措置(令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間)
- ●消費税の納税額を売上消費税×20%に出来る
- ●確定申告書に付記すれば適用を受けられる 事前の届出は不要
- ①本則課税or ②2割特例 申告時に選択可
- ②簡易課税or ②2割特例 申告時に選択可
計算例
(売上高が税抜500万円のサービス業で経費が税抜100万円みなし仕入率50%)
- (1)
- 本則課税の場合
納税額 = 50万円 - 10万円=40万円
- (2)
- 簡易課税の場合
納税額 = 50万円 -(50万円×50%)=25万円(サービス業の場合)
- (3)
- 2割特例
納税額 納税額 = 50万円 × 20%=10万円
留 意 点

一度2割特例を選択した場合、その後の適用対象期間は継続適用となるか否かの点ですが、消費税の申告を行う度に2割特例の適用を受けるかどうかの選択が可能です。ただし、申告する課税期間が2割特例の適用対象となるか否かの確認が必要となります。例えば令和8年分の申告について、令和6年(基準期間)における課税売上高が1千万円を超えた場合には、2割特例は適用出来ない事になります。2割特例は免税事業者が課税事業者になるケースに限り使える制度の為です。