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of The Sky No.88 Page 3
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税務
新証券税制について
税経管理第3部 部長 宇野澤雅男
1.証券税制は、どう変わるか。
上場株式等を売却した際の課税方式が平成15年1月から「申告分離
課税」に一本化されます。
「申告分離課税」では、年間の株式売却額の合計額から取得額などを
差し引いた売却益を、自分で計算して、翌年3月15日迄に税務署に確
定申告をすることになります。
現在、申告分離課税を選択した場合、所得税の税率が20%住民税が
6%とされていますが、平成15年以降は、所得税の税率が15%住民
税が5%になり、合計で26%から20%に税率が引き下げられます。
2. 平成15年特定口座開設による申告不要制度の導入
自分で確定申告をする煩わらしさを軽くするために用意されたものに、
簡易納税制度である「特定口座」(証券会社に開設する)があります。
特定口座には「源泉徴収方式」と「非源泉徴収方式」があります。
「源泉徴収方式」を選択した場合は、株式を売却した翌月に証券会社が
売却損益を計算し、売却益の15%を所得税分として徴収して代行納税
しますので、所得税の確定申告は不要になります(地方税5%は本人が
別に納税することになります。)
「非源泉徴収方式」を選択した場合は、自分で確定申告をする必要があ
りますが、この場合も証券会社が年間取引報告書を作成してくれますの
で、それを添付して確定申告すればよいことになります。
なお「源泉徴収方式」を選択した場合、譲渡損失の繰越控除制度や時
限優遇措置が利用できません。優遇措置を利用できるのは確定申告をし
た人に限られますので、選択には注意が必要です
3. 譲渡損失の繰越控除制度
平成15年1月1日以後に生じた上場株式等の譲渡損については、他
の有価証券の譲渡損と通算してもなお赤字が残る場合は、その譲渡損は
3年間繰越控除ができるようになりました。
4. 時限優遇措置
今回の証券税制の改正には、前項の恒久的措置とは別に期限が限られ
ている優遇措置がありますので、次にご紹介いたします。
@ 取得費を平成13年10月1日終値の80%とすることができます。
取得価格が不明又は低い株式はどうするか。この場合には、平成13
年9月30日以前から引き続き所有している上場株式等を平成15年1
月1日から平成22年12月31日までに売却した場合の取得費は、そ
の上場株式等の「平成13年10月1日の終値の80%」とみなすこと
ができる「みなし取得費の特例」が利用できます。
一方、所有株式の時価がみなし取得価額(クロス取引の税金と手数料
を含む。)以上に値上がりしている場合で、今後もそれ以上の値上がり
が期待できる場合は「クロス取引」をすると有利になることがあります。
「クロス取引」とは、保有している株券を市場で売却し、すぐに買い
戻すことで、これによって買い戻した価額が取得価額となります。
但し、この「クロス取引」をする場合、譲渡代金の1.05%の税金
と、往復の売買手数料と消費税がかかることも考慮する必要があります。
A 1年超所有株の譲渡益には100万円控除
平成13年10月1日から平成17年12月31日までの間に、1年
を超えて所有した上場株式等を、証券会社を通じて譲渡した場合に申告
分離課税を選択すると、100万円の特別控除が受けられます。
B 1年超所有株の譲渡益には軽減税率10%適用
平成15年から平成17年末までの間に、1年超所有した株式等を譲
渡した場合は、10%(所得税7%+住民税3%)の軽減税率の適用を
受けることができます。
C 購入価額合計が1,000万円までの投資での売却益は非課税
平成13年11月30日から平成14年末までの間に購入した上場株
式等を平成17年1月1日から平成19年末までに譲渡した場合、譲渡
株式等のうち購入価額(買値×購入株数)が1、000万円までのもの
について生じた売却益は、一定要件のもとで非課税となります。
以上、来年度から大きく変わる新証券税制について述べましたが、制
度が複雑で、選択の方法によっては思わぬ損をすることもあります。
又、今後の改正も予想されますので、慎重な対応が必要となります。
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