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The Limit
of The Sky No.95 Page 2
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税 務
平成16年度税制改正の概要
税経管理第10課 課長 伊藤 敬一
T年金税制 U住宅税制 V土地税制 W金融証券税制 X事業承継税制
Y法人税制 Z地方税制 [その他の改正
T 年金税制 (平成17年分の所得税及び平成18年分の住民税から適用)
1.公的年金等控除額の見直し
(1) | 65歳以上の人について上乗せされている措置を廃止。 |
(2) | 65歳以上の人についての控除最低保証額140万円を120万円に引き下げ。 |
2.老年者控除の廃止
年齢が65歳以上で合計所得金額が1000万円以下の人について適用されていた「老
年者控除」(50万円、住民税は48万円)が廃止されます。
3.確定拠出年金の拠出限度額の引き上げ
現行 | 改正案 | ||
企業型 | 他の企業年金がない場合 | 月額3.6万円 | 月額4.6万円 |
他の企業年金がある場合 | 月額1.8万円 | 月額2.3万円 | |
個人型 | 企業年金がない場合 | 月額1.5万円 | 月額1.8万円 |
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U 住宅税制
1.住宅借入金等特別控除の見直し
平成16年から縮減されることになっていましたが、平成16年居住分は現行どおり
とし、平成20年までの間、以下のとおりとなります。
居住年 | 控除期間 | 借入金等の年末残高 | 適用年・控除率 |
平成16年 | 10年 | 5000万円以下の部分 | 1年目〜10年目 1% |
平成17年 | 10年 | 4000万円以下の部分 | 1年目〜 8年目 1% 9年目〜10年目 0.5% |
平成18年 | 10年 | 3000万円以下の部分 | 1年目〜 7年目 1% 8年目〜10年目 0.5% |
平成19年 | 10年 | 2500万円以下の部分 | 1年目〜 6年目 1% 7年目〜10年目 0.5% |
平成20年 | 10年 | 2000万円以下の部分 | 平成19年と同様 |
2.特定の居住用財産の買換え等の場合の繰越控除の要件緩和
(1) | 平成18年12月31日まで3年間延長。 |
(2) | 譲渡契約の前日等において譲渡資産にかかる住宅借入金等を有していると いう適用要件を除外。 |
3.特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除の創設
上記2の特例のように、買換えを行わず、単に居住用財産を譲渡した場合でも譲渡
損失の繰越控除を認める措置が創設されました。
適用期間 | 平成16年1月1日から平成18年12月31日までの間。 |
適用要件 | 所有期間が5年超の居住用財産の譲渡をして譲渡損が発生した場合。 |
内容 | 住宅借入金残高から譲渡対価を控除した額を限度として、他の所得と の損益通算後の損失金額について、翌年以後3年間の繰越控除(合計 所得金額が3000万円以下である年分に限る)を認める。 |
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V 土地税制(平成16年1月1日以後に行う土地・建物等の譲渡から適用)
1.長期譲渡所得の税率の引き下げ
現行 | 特別控除後の譲渡益×26%(所得税20%、住民税6%) |
改正案 | 〃 ×20%(〃 15%、〃 5%) |
2.優良住宅地の造成等のために土地を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
以下のように税率が引き下げられるとともに、適用期限が5年延長されます。
現行 | 特別控除後の譲渡益4000万円以下の部分×20%(所得税15%、住民税5%) 〃 4000万円超の部分 ×26%(〃 20%、〃 6%) |
改正案 | 〃 2000万円以下の部分×14%(〃 10%、〃 4%) 〃 2000万円超の部分 ×20%(〃 15%、〃 5%) |
また、以下の特例と上記軽減税率の併用適用はできないことになります。
(1) 収用交換等により代替資産を取得した場合の課税の特例、換地処分等に伴い資
産を取得した場合の課税の特例その他の課税の繰り延べ措置
(2) 収用交換等の5000万円控除
(3) 特定土地区画整理事業等のための2000万円控除
(4) 特定住宅地造成事業等のための1500万円特別控除
(5) 農地保有合理化等のための800万円特別控除
(6) 居住用財産の3000万円特別控除
3.長期譲渡所得の100万円特別控除の廃止
長期譲渡所得の計算上認められていた100万円の特別控除が廃止されます。
4.短期譲渡所得の税率の引き下げ
現行 | 次のいずれか多い方の税額による。 a譲渡益の52%(所得税40%、住民税12%) b全額総合課税をした場合の上積税額の110% (国等に対する譲渡の場合) 次のいずれか多い方の税額による。 a譲渡益の26%(所得税20%、住民税6%) b全額総合課税をした場合の上積税額 |
改正案 | 譲渡益の39%(所得税30%、住民税9%) (国等に対する譲渡の場合) 譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%) |
5.土地・建物等の譲渡所得にかかる損益通算及び繰越控除の不適用
土地・建物等を譲渡した場合に生じた損失については、原則として...
現行 | (1) 他の所得との損益通算が認められていた。 (2) 青色申告者については3年間の繰越が認められていた。 |
改正案 | 平成16年分以後の所得税と平成17年分以後の住民税から、上記(1)及び(2) は認められなくなります。 |
※損益通算と繰越控除が認められるのは、上記U2,3の場合のみになります。
6.その他の住宅・土地税制の改正事項
(1) | 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等にかかる事業所得等の課税 の特例について、適用停止措置の期限が5年延長されます。 |
(2) | 特定の民間住宅造成事業のために土地等を譲渡した場合の1500万円特別控除 の適用期限が3年延長されます。 |
(3) | 法人の土地重課について、適用停止措置の期限が5年延長されます。なお、 一般の土地重課の適用除外措置(優良住宅地等のための譲渡等にかかる適用 除外)の適用期限も5年延長されます。 |
(4) | 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、長期所有の土地・建物 等から国内にある土地・建物・機械装置等への買換えの適用期限が3年延長 されます。 |
(5) | 農地等についての相続税の納税猶予の特例の改正に伴う賃貸住宅用地等への 転用にかかる経過措置について、適用対象者が見直された上、その適用期限 が3年延長されます。 |
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W 金融・証券税制
1.非上場株式の譲渡益課税の軽減(平成16年1月1日以後の譲渡から適用)
現行 | 26%(所得税20%、住民税6%) |
改正案 | 20%(〃 15%、〃 5%) |
2.公募株式投資信託の受益証券の譲渡益課税の軽減(平成16年1月1日以後の譲渡
から適用)
現行 | 26%(所得税20%、住民税6%) |
改正案 | 20%(〃 15%、〃 5%) ※平成19年12月31日までは10%(〃 7%、〃 3%) |
3.エンジェル税制(特定中小会社が発行した株式にかかる課税の特例)の拡充
(1) 特定中小会社の範囲の拡大
平成16年4月1日以後に払込みにより取得する株式から、次の会社が特定中小会社
の範囲に加えられます。
・内国法人のうち、その設立の日以後10年を経過していない中小企業者に該当す るもので、投資事業組合契約に従って投資事業有限責任組合を通じて投資される 一定の要件を満たす株式会社 |
・内国法人のうち、その設立の日以後10年を経過していない中小企業者に該当す るもので、証券業協会がその定める規則に従って指定をした銘柄(グリーンシー ト・エマージング区分)の株式を発行する等一定の要件を満たす株式会社 |
(2) 特定株式の譲渡期間の緩和等(平成16年4月1日以後の譲渡より適用)
@現行 改正案 |
上場等の日において同日前3年超所有し、かつ同日以後3年以内の譲渡 譲渡の日において同日前3年超所有し、かつ上場等の日以後3年以内の 譲渡 |
A@に伴い、特定中小会社が上場等をする日前にその特定株式を合併・買収等によ る一定の譲渡をした場合でも、この特例の対象となります。 |
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X 事業承継税制
1.評価減の対象となる特定同族会社株式の対象範囲の拡大
現行 | 3億円までの部分について10%の評価減(最高3000万円) |
改正案 | 10億円までの部分について10%の評価減(最高1億円) |
※価額は相続税評価額ベース。平成16年1月1日以後に相続もしくは贈与によって
取得したものから適用。
2.相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例の創設
適用要件 | 平成16年4月1日以後の相続等により取得した非上場株式を同日以 後、申告期限の翌日から3年以内に発行会社に譲渡する場合。 |
内容 |
譲渡対価のうち、資本等の金額を超える部分はみなし配当とせずに、 相続税額の取得費加算をした上で、譲渡益を算定し、譲渡益課税を行 うことになります。 |
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Y 法人税制
1.繰越欠損金の期間の延長と更正の期間制限の改正等
(1) | 繰越期間を欠損金の生じた年度の翌年度から7年間に延長。 ※平成13年4月1日以後に開始した事業年度において生じた欠損金に適用。 それ以前に生じた欠損金については5年間。 |
(2) | 帳簿書類の保存期間がすべてについて7年に延長。(平成13年4月1日以後に 開始した事業年度に係る帳簿書類について適用。) |
(3) | 更正の期間制限が欠損金額(平成13年4月1日以後に開始した事業年度にお いて生じたもの)にかかるものは7年に、脱税以外の過少申告(平成16年4 月1日以後に法定申告期限が到来する法人税)にかかるものは5年に、それぞ れ延長。 |
(4) | 欠損金の繰戻還付制度は、現在の適用停止措置が2年延長。 |
2.連結付加税の廃止
連結納税を選択した場合の2%上乗せされる連結付加税は、平成16年3月31日ま
での開始事業年度で適用期限が到来することに伴って廃止されます。
3.その他の法人税関係の改正
(1) | 法人の土地重課制度の適用停止措置が5年延長。 |
(2) | 同族会社の留保金課税の不適用制度の適用期限が2年延長。 |
(3) | 資産整理に伴う私財提供等があった場合の欠損金の損金算入制度について、繰 越欠損金から資本積立金額を控除しないこととされます。 |
(4) | 使途秘匿金課税の適用期限が2年延長。 |
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Z 地方税制
1.個人住民税の改正(平成17年度分から適用)
(1) 市町村民税の均等割
現行 | 人口50万以上の市 年額3000円 人口5万以上50万未満の市 年額2500円 その他の市町村 年額2000円 |
改正案 | 一律 年額3000円 |
また、均等割の納税義務がある夫と生計を一にする妻についての均等割の非課税 規定が廃止されます。平成17年度分については経過措置として1/2の1500円と なります。 |
(2) 住民税の非課税限度額
均等割
現行 | 35万円×(本人、控除対象配偶者、扶養親族の合計数)+※24万円 |
改正案 | 35万円×(本人、控除対象配偶者、扶養親族の合計数)+※22万円 |
所得割
現行 | 35万円×(本人、控除対象配偶者、扶養親族の合計数)+※36万円 |
改正案 | 35万円×(本人、控除対象配偶者、扶養親族の合計数)+※35万円 |
※加算額は控除対象配偶者または扶養親族を有する場合のみ加算する。
2.固定資産税の改正
(1) 負担水準(当年度の評価額に対する前年度の課税標準額の割合)の減額
現行 | 商業地等で負担水準が70%を超える場合には、負担水準を70%とした場 合の税額まで引き下げる特例措置が手当てされていました。 |
改正案 | 条例によって60%〜70%の範囲で減額できることとされます。 |
(2) 制限税率の廃止
現行 | 条例により2 . 1%まで引き上げ可能(標準税率1 .4%)。 |
改正案 | 2.1%の制限税率を廃止(条例により定めることができる)。 |
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[ その他の改正
1.通勤手当(交通用具を使用する場合)の非課税限度額の改正
現行 | 片道35q以上 20,900円/1ヶ月 |
改正案 | 片道35q以上45q未満 20,900円/1ヶ月 片道45q以上 24,500円/1ヶ月 |
※いずれの場合も、運賃相当額が限度額超の場合は10万円を限度としてその金額。平
成16年4月1日以後に受けるべき通勤手当について適用。
2.青色申告特別控除額の引き上げ
(1) | 正規の簿記の原則に従って記録している青色申告者…65万円(現行:55万円) |
(2) | 簡易な簿記により記録している青色申告者…廃止(現行:45万円) |
※平成17年分の所得税及び平成18年分の住民税から適用。
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☆正式の決定は今後になります。詳細な取扱については、各担当者にお尋ね下さい。
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