一般的には「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」が使用されています。
全部(全文・日付・氏名)を自筆で書いて、押印して作成するのが「自
筆証書遺言」です。費用はかからないものの、書き方に少しでも間違い
があると無効になってしまいます。たとえば、「平成 29 年 1 月吉日」
といった日付の書き方では無効です。遺言書の保管者や見つけた相続
人は遺言者が亡くなった際、速やかに家庭裁判所に提出して「検認」
の手続きを申請することになっています。また、隠し場所によっては、
遺言がそのまま発見されない事態もありえるので注意しましょう。
「公証人」という法律の専門家に作成してもらい、原本を公証人役場
で保管してもらう遺言が「公正証書遺言」です。公証人役場で証人 2 人
(以上)の立会いのもと、遺言者の口述内容から公証人が作成します。
書き方の不備で無効になるリスクがなく、検認手続きも不要です。費
用は、たとえば 1 億円の相続財産に関して公正証書で作成すると 4 万
3000 円の手数料がかかります。
分割協議成立後に出てきた遺言書
相談者
四十九日で形見分けをして、亡くなったおじいさんの遺品を
整理しました。遺産分割協議を行い、全員が納得の上で円満に財産
を分割しました。そして「さあ相続税の申告」という段階になって、な
んとタンスの奥から遺言書が出てきました。このような場合、どうな
るのでしょうか。
税務のプロ
原則的には、遺言書がある場合は遺言の内容に従って
財産を分けます。遺言は最大限に尊重されるべきものだからです。
しかし、相続人全員が遺言書の内容を確認したうえで、
遺産分割協
議の内容を優先させることに合意すれば、その遺産分割協議の内容
のままでよい
ことになります。
税務のプロが語る
「知っ得話」
〈遺言書の種類〉
1. 自筆証書遺言 ー 書き方を誤ると無効の危険性
2. 公正証書遺言 ー 公証人役場で作成、費用がかかる
〈遺言書の勘所〉資産ごとに最適の人に受け取ってもらう
〈 遺言書のルール〉生きているうちは何度でも書き直せる
〈遺言書でできること〉主なことを以下に挙げます
● 特定の遺産を特定の相続人に相続させる
通常の手法で「(相続人)Aに××を、Bに△△を…相続させ
る」と記す
●相続分を指定する
財産の「○%をAに・・・」「○分の1をBに・・・」という
方法で全体に対する割合を指定して財産を相続させる手法
● 相続人以外に財産を遺贈する
法的な相続人以外に財産を残したい場合の手段
● 遺言執行者の指定及び指定の委託
●子供を認知する
●相続人を廃除する(または廃除を取り消す)
多様な財産をそれに相応しい人にどう分配するのか。借金をどうす
るのか。そうしたことを書き残しておくのが勘所です。オーナー経営
者なら、後継争いで会社が分裂しないように考えておきましょう。
一度作った遺言書は、生きている間は何度でも書き直したり、取り消し
たりができます。遺言書が複数ある場合は、後の日付のものが優先されま
す。「いつまでも家族仲良く思いやりをもって助け合うこと」「遺産は円
満に分割すること」「墓碑銘は○○と刻んで」「葬儀はキリスト教式で行っ
てほしい」など、個人的な思いや感情を書くこともできますが、法的な効
力はありません。
ちなみに「エンディングノート」は遺言書のような法的効力はありません。
第4章
「争族」という言葉があります。せっかくの財産を一族の争いごと
の原因にせず、相続人の幸せに役立つようにするには「遺言書」が最
も頼りになります。
2
遺言書を書いておこう、そのポイント
遺言書
4
家
族
の
た
め
に
将
来
の
相
続
に
備
え
る