〈2 〉に加え、次男へ住宅取得のため 500 万円を贈与し、3 人の孫に
対して教育資金の一括贈与(各1500万円)を行う。
対策の中で挙げている住宅取得や教育資金などの贈与、小規模宅地
などでの特例は、本書中のそれぞれの解説をご覧ください。
〈1. 対策あり〉
では相続人が 1 人増えることにより基礎控除額が増え、
税率も下がります。また、お墓等は非課税のため使った現金分の相続
財産が減ります。
〈2. 対策追加 〉
では自宅の土地建物は相続税評価額になることにより
現金で 1 億円持っているのに比べて評価額が 2 ~ 3 割下がり、さらに
小規模宅地の特例により土地部分は 2 割に減額されます。
〈3. さらに追加 〉
では住宅取得のための贈与と教育資金の一括贈与は
贈与税も相続税もかからなくなります。これで〈2〉よりさらに約 2000
万円減り、〈そのまま〉と比べると実に約7346万円もの差額が出ます。
法定相続人となる養子の人数に制限
文中の〈 1.対策あり〉により養子縁組で相続人の数が増え、相続対
策になりました。
それでは、養子を増やせば、際限なく基礎控除額を
拡大できるかというと、そうは行きません。
相続税の基礎控除額の増
額に結び付くのは「法定相続人」を増やすことです。
法定相続人は実
子がいない場合で2人、実子がいる場合は1人までしか養子で増やす
ことはできません(
5章 ー 7
参照)。
また、相続人が増えると、1人当たりの相続財産が減ることにもなり
ます。
納税額全体が減っても、個々の相続人の法定相続分はその分
下がります。
税務のプロが語る
「知っ得話」
〈 3. さらに追加 〉
〈住宅取得やリフォームでの贈与税の特例など 〉
〈相続対策の解説〉
●
相続人は長男と妻(養子)、次男の3人 = 基礎控除額計4800万円
●相続財産 = 現金4億4700万円、自宅3760万円
この結果、相続人3人が支払う相続税額 = 約1億2364万円となります。
〈1. 対策あり〉
〈2. 対策追加〉
〈そのままのケース〉
現金で 6 億円を遺してそのまま相続に直面
●相続人は長男と次男の2人とする。2人の基礎控除額
= 計4200万円
この場合、2人の相続人が支払う相続税 = 1億9710万円になります。
●相続人は長男と妻(養子)、次男の3人で基礎控除額
= 計4800万円
●
相続財産は現金5億9700万円(お墓と仏壇は相続の際に非課税)
この結果、3人の相続人が支払う相続税 = 計1億6860万円となります。
●相続人は長男と妻(養子)、次男の3人
= 基礎控除額計4800万円
●
相続財産は現金4億9700万円、自宅は長男が取得し、土地部分は
小規模宅地の特例の適用を受けると自宅の相続税評価額は3760万円
この結果、相続人3人の支払う相続税額 = 計1億4364万円となります。
上記で、生前に長男の妻を養子に迎え、さらにお墓と仏壇を購入していた
場合ではどうでしょう。お墓200万円、仏壇100万円が取得金額とします。
上記〈1〉に加えて、1億円で自宅を新築(土地6000万円、建物4000万
円)し、長男家族と同居したとすると、どうなるでしょうか。
第4章
お金持ちの方が何の対策もせずに万が一のご不幸に見舞われると、
遺されたご家族は通常、多額の相続税を支払うことを避けられませ
ん。子孫の繁栄を願って遺産をなるべく減らさずに手渡すためには、
あらかじめいくつかの対策を組み合わせて打っておくことが賢明で
す。ケースを通じて、対策の効果を比較してみましょう。
5
相続対策を組み合わせて効果拡大
複数の相続税対策
4
家
族
の
た
め
に
将
来
の
相
続
に
備
え
る