第5章
引退した創業社長が 90 歳を過ぎ、子は老いていて、すでに孫の世
代が経営を切り盛りしているとしましょう。孫は第一順位の法定相
続人ではないので直に相続はできません。そこで子の代を飛ばして
直接孫に財産を贈与する「一代飛び越し贈与」という方法があります。
相続税の発生が一代分抜けるなどの効果が期待できます。生前に贈
与をすることが必要です。
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子を飛び越して孫に贈与の節税策
一代飛び越し贈与
「代襲相続」とは、孫のいる人が亡くなった時、すでにその子が亡く
なっていた場合に限り、孫が子の権利をそのまま引き継いで相続する
ことです(
第6章ー4
参照)。それに対し「一代飛び越し贈与」は、子
が健在の場合に子の親からその孫に直接贈与します。
将来値上がりしそうな資産や収益を生む資産を選び、一代飛び越し
贈与の対象にするのが得策です。孫が会社の将来の後継者なら、今後
値上がりが見込める自社株や将来有望な有価証券、不動産から贈与し
ましょう。また、毎月お金を生む賃貸不動産やデフレ時には現預金も
いいでしょう。反対に将来価値が下がると予想される資産は外すのが
賢明です。
相続財産に戻されない贈与方法
相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続時に持ち戻して加
算されます(
第6章 ー 9
参照)。
その対象者は相続または遺贈によっ
て財産を取得した人に限られます。
つまり、相続の時、遺言で財産を
もらったり、死亡保険金を受け取ったりしていなければ、孫や相続人
でない子の配偶者(嫁・婿)への贈与は、相続の直前であっても贈与
税のみで済むわけです。
ただし、相続の際に、法定相続人が「生前贈与(
第5章 ー 5
参照)に
よって遺留分を奪われてしまった」として遺留分を請求されるケース
もあります。
本来の相続人の了承を得られるように贈与するのが肝
要です。
税務のプロが語る
「知っ得話」
〈代襲相続と一代飛び越し贈与の違い〉
〈一代飛び越し贈与に適した財産〉
〈一代飛び越し贈与とは〉
〈相続税に比べて有利になる場合〉
〈一代飛び越し贈与の 3 つの利点〉
本人が生存中に子を飛び越して、孫に現預金、不動産、株式の財産
贈与することです。相続税ではなく贈与税の対象になります。
子と孫の代の2回の相続税額合計額と比べて、孫への贈与税が低い
場合には贈与が有利になります。これには贈与税率を下げて贈与する
長期間に渡る贈与計画が必要です。
(1)この方法をとることによって、子が負担する相続税を1回節約し
て、直接孫に財産を承継させることができます。
(2)相続税加算額の2割加算を避けられます。
亡くなった人の財産を、その人の子が存命中に孫が遺贈によっ
て取得した場合には、相続税の2割加算があります。孫に前もっ
て贈与しておけば、この加算負担が避けられます。
(3)孫には3年以内に万が一相続が発生しても相続財産への加算(
第
6章ー9
参照)はありません。
「相続又は遺贈により財産を取得した者」以外の人への贈与
は、相続開始前3年以内であっても相続財産に加算されません。
5
す
ぐ
役
立
つ
相
続
策
と
プ
チ
対
策