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会 計
『外貨建・海外取引の為替換算会計の概要』
税経管理第8部 部長 松村 恭男
近年、国際会計基準が必要とされる程、企業活動と金融市場が国際
化してきていることに伴い、外貨建取引も増加の傾向を示しています。
外国との間で行われた取引が、日本円以外の通貨で行われた場合に、
最終的には日本円による金額に変換することが必要になります。外国
通貨を用いて測定・表示された金額を日本円によって表示し直す手続
き、すなわち、「換算」手続きが会計上必要となってくるのです。
そこで、今回は、外貨建・海外取引の為替「換算」会計の概要につ
いて述べたいと思います。
<1>「換算」対象
(1)「外貨建等会計処理基準(以下、「外貨建基準」と略称します。)」
によると「換算」対象を、次の三つの領域に区別しています。
@ 「外貨建取引」の換算
A 在外支店の財務諸表項目の換算
B 在外子会社または在外関連会社の財務諸表項目の換算
(2)「外貨建基準」によれば、「外貨建取引」とは「売買価額その他
取引価額が外国通貨で示されている取引」をいい、次のようなもの
があります。
@ 取引価額が外貨で表示されている物品の売買又は役務の授受
A 決済金額が外貨で表示されている資金の借入又は貸付
B 券面額が外貨で表示されている社債の発行
C 外貨による前渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入
D 決済金額が外貨で示されているデリバティブ取引 等
<2>「換算」方法
(1)換算方法としては、次の四つの方法があります。このうち、「外
貨建基準」は「外貨建取引」の決算時の原則的換算方法としては
Aの貨幣・非貨幣法を採用しています。(H12年4月1日〜)
@ 流動・非流動法
流動項目−決算時の為替相場(CR)を適用して換算
非流動項目−発生時の為替相場(HR)を適用して換算
A 貨幣・非貨幣法
貨幣項目−決算時の為替相場(CR)を適用して換算
非貨幣項目−発生時の為替相場(HR)を適用して換算
B テンポラル法
貨幣性項目−決算時の為替相場(CR)を適用して換算
外貨による時価が付された非貨幣性項目−決算時の為替相場(C
R)を適用して換算
C 決算日レート法
財務諸表の全項目を決算日レートという単一レートで換算
(2)四つの換算方法のうち、@ABは複数レート法、Cは単一レー
ト法と分類できます。
<3>取引時の「換算」に用いる外国為替相場
(1)外貨建取引の換算を行う場合に適用される外国為替相場には、
直物(ジキモノ)為替相場と先物(サキモノ)為替相場があり
ます。
(2)直物為替相場とは、外貨との交換が当日又は翌日中に行われる
場合に適用される為替相場であり、直物レートともいわれます。
(3)先物為替相場とは、将来の時点で外貨と交換することを契約す
る取引に適用される為替相場をいいます。
<4>決算時の換算基準
(1)決算時における外貨建項目の換算方法を、「外貨建基準」に基づ
いて示せば下記の図表のようになります。(H12年4月1日〜)
(2)換算方法は、「金融商品に係わる会計基準」との整合性等を考慮
して為替相場の変動を財務諸表に反映させることを重視する観点
から採用されたものです。例えば、旧基準のように金銭債権債務
の換算方法において短期・長期の区分を設けていません。
<5>為替差損益の処理
(1)「為替差損益」とは、外貨建金銭債権債務の決済(外国通貨の円
転換を含む)に伴って生じた損益のことをいいます。
(2)「外貨建基準」は、為替差損益の処理方法として「二取引基準」
を採用しており、原則として、当期の為替差損益とします。
「二取引基準」とは、輸出入等外貨建取引と、それに伴って生じ
る売掛金や買掛金等の代金決済取引とを別個の取引とみなして会
計処理を行う方法をいいます。
例外として、有価証券の強制評価減から生じた差額は、為替差損
益ではなく、当期の有価証券評価損として処理します。
<6>為替予約の処理
(1)為替予約とは、為替業務を行う銀行との間で、企業が将来に外
貨と日本円を交換するときに適用される為替相場を現時点で前
もって契約しておくことをいいます。外貨を取引対象としたデ
リバティブの一種です。
(2)為替予約をしておけば、将来、為替相場がどのように変化して
も、前もって契約しておいた先物為替相場を適用して取引の決
済をすることができます。
為替予約が付された外貨建取引の会計処理には「振当(フリア
テ)処理」と「独立処理」があります。どちらを採用してもよ
いとされています。
(3)「振当処理」とは、為替予約で確定した日本円の額で外貨建取
引を記録する方法です。
「独立処理」とは、外貨建取引と為替予約を別個の取引とみな
して会計記録を行う方法です。
(4)為替予約は外貨建取引の最初から付されることもあれば、当初
は為替予約を付さないで、替相場の動向をみながら途中で為替
予約を付すケースもあります。
途中で為替予約を付した場合には次の二つの差額が生じること
になります。
@ 取引発生時と予約時の直物為替相場(直物レート)から生じる
差額→「直直(ジキジキ)差額」
A 予約時の直物為替相場(直物レート)による換算額と予約した
先物為替相場(先物レート)による換算額との差額
→「直先(ジキサキ)差額」
(5)この二つの差額の処理において、「直直差額」は予約時の為替差
損益として処理し、「直先差額」は一旦、資産又は負債として処
理し、決済日までの期間に配分します。
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