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税 務
電子帳簿保存法改正について
税経管理第9部 部長 小島
平成28年度の税制改正により「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書
類の保存方法の特例に関する法律施行規則」の一部が見直され、いわゆるスキャ
ナ保存制度の要件が改正されました。
スキャナ保存制度とは企業が外部から受取った領収書、請求書等や自社が発行
したこれらの書類の控えをスキャナで読み取り、画像データとして保存すること
により、元の書類を破棄することのできる制度です。
1改正の概要
(1)スキャナについて「『原稿台と一体型』に限る」要件の廃止
これまで、国税関係書類の読み取りを行うスキャナについては「原稿台と一体
型に限る」という要件がありましたが、この要件が廃止されました。
(2)領収書等の受領者が読み取る場合の要件を整備
領収書や請求書等について、その受領者や作成者が読み取る場合、受領後、そ
の者が署名の上、3日以内にタイムスタンプを付すことが要件とされました。また、
この場合で、読み取る国税関係書類の大きさがA4以下であるときは、大きさに関
する情報の保存が不要とされました。
この(1)・(2)の改正により例えば、受領した領収書を社外でもスマホで読み取る
ことができるようになりました。
※タイムスタンプとはタイムスタンプ事業者により発行される電子的な時刻証
明のことを言います。タイムスタンプは一般財団法人日本データ通信協会により
時刻認証業務を認定されたタイムスタンプサービス業者のものでなければなりま
せん。
(3)小規模企業者の特例を創設
保存義務者は、いわゆる適正事務処理要件(@相互けんせい、A定期的なチェ
ック、B再発防止策)に関して、事務手続きや規定を整備するとともに、これら
に基づいた事務処理を行う必要がありますが、保存義務者が小規模業者の場合で
Aの定期的なチェックを税務代理人が行うときは@の相互けんせいの要件につい
ては不要となりました。
※@相互けんせいとは、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能するような
事務処理の体制を言います。
※A定期的なチェックとは、事務処理の手続きにおいて最低限1年に1回以上チ
ェックを行う体制を言います。
2.電子帳簿保存法によるスキャナ保存対象書類
国税関係帳簿書類の電子保存は「帳簿」「計算、整理又は決算関係書類」「その
他の証憑類」に分類されてどのように保存できるかが定められていますので、ス
キャナ保存できない書類、できる書類があります。
(1)スキャナで保存できない書類
帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、一定の取引に関して作成されたその他の帳簿) 決算関係書類(棚卸表、貸借対照表、損益計算書、計算、整理又は決算に関して 作成されたその他の書類) ※帳簿や決算関連文書はスキャナ保存の対象外であって、電磁的記録による保存 が対象外となっているわけではありません。 |
(2)スキャナで保存できる書類
契約書、領収書 預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、有価証券受渡計算書、社債申 込書、定型的約款のない契約申込書、請求書、納品書、送り状、輸出証明書およ びこれらの写し 検収書、入庫報告書、貨物受領証、見積書、注文書、定型的約款のある契約の申 込書、およびこれらの写し |
3.適用時期
この改正は、平成28年9月30日以後にスキャナ保存の承認申請書を提出した
場合に適用されます。
3か月前までに申請が必要となるため、平成29年1月1日からスキャナ保存が
可能となります。
過去にスキャナ保存制度の申請をしている場合でも、平成28年度改正後の要件
でスキャナ保存をする場合は、再度申請が必要となります。
以上がスキャナ保存制度改正の大まかな内容です。
書面による証憑を廃止して、スキャナ保存データを国税関係書類の原本とする
ことで、ペーパーレス化が実現できれば、大量な紙をファイリングする労力や単
純なスペースの確保による保管コストも削減できます。また、スキャナ保存要件
の一つでもある電子データで保存することにより必要な証憑を検索、抽出するこ
とも容易になります。さらに、スキャニングされた書類をOCRで解析することに
よって仕訳も自動で行うことも可能で、経理業務の効率化等も期待されています。
ただし、スキャナ・スマホなどの利用が認められるには@入力要件A電子計算
機処理システムの要件B入力者等の情報の確認C適正事務処理要件Dスキャニン
グした書類と帳簿との関連性の確保E可視性の確保Fシステムの概要書等の備え
付けG検索機能の確保等をクリアする必要があります。
スキャナ保存制度に関しての詳細については各担当者にお尋ねください。
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