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税  務

インボイス制度導入による免税事業者への影響

税経管理第6部 部長 細美 忠彰

令和5年10月1日よりインボイス制度が導入されます。この制度の導入により適格請求書発行事業者が発行する適格請求書(インボイス)等の保存が消費税の仕入税額控除を受けるための要件となります。

そのため適格請求書等の保存のない課税仕入は、原則として消費税の仕入税額控除を行うことができなくなります(導入後3年間は仕入税額相当額の80%、その後の3年間は50%が控除できる経過措置があります)。

このインボイス制度の導入により消費税の課税事業者は適格請求書発行事業者となり、導入後は適格請求書を発行する必要があります。

そしてこのインボイス制度の導入は課税事業者だけでなく、課税売上高が1,000万円以下で、これまで消費税の申告・納付が免除されていた免税事業者にも影響があります。

消費税の課税事業者は、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、適格請求書発行事業者となることで適格請求書を発行するとなることができますが、免税事業者は適格請求書を発行することができません。

今回はこれまで消費税を免税されていた免税事業者がインボイス制度導入によりどのような影響があるのか、またどのような対策が必要なのかを考えてみたいと思います。


1. 免税事業者への影響

インボイス制度導入後も、これまでどおり免税事業者のままで事業を行うことは可能です。しかしそれにより問題が発生する可能性があります。

取引先が課税事業者(原則課税)であった場合、これまでは免税事業者から課税仕入を行った場合でも消費税の税額控除を受けることができましたが、インボイス制度導入後は税額控除ができなくなります。つまり同じ仕入を行っても、税額控除をできる業者とできない業者に分かれることになります。

同じ仕入を行うなら、課税事業者(適格請求書発行事業者)から仕入れた方が消費税上有利になるため、取引先を課税事業者に切り替えられてしまう可能性も考えられます。

そのため、免税事業者のままでいると仕事が減ってしまう可能性があります。 課税事業者になれば、免税事業者であることを理由に仕事が減ることはなくなりますが、今まで納めなくてよかった消費税を納めないといけなくなります。

免税事業者の場合は課税事業者となるのか、免税事業者のままでいるのかどちらが有利か検討をする必要があります。


2. 検討

業種や取引先の関係によって、課税事業者に切り替えた方がいい場合と、免税事業者のままの方がいい場合があります。

適格請求書が必要でない個人の一般消費者との取引が主な場合など、免税事業者でいたほうが良いケースも考えられます。

しかし適格請求書が必要な業者との取引が主な場合など、課税事業者となる必要がある場合もあります。

それぞれのメリットとデメリットを理解の上、慎重に検討することが必要です。

(1)免税事業者でいることのメリット

これまでどおり消費税の申告や納税は免除されます。

(2)課税事業者になることのメリット

課税事業者に切り替えることにより、適格請求書発行事業者となることができ、取引先から仕入税額控除ができないことを理由に他の取引先に変更されてしまうリスクをおさえることができます。


3. 適格請求書発行事業者となるための手続き

令和5年10月1日から「適格請求書発行事業者」の登録を受けるためには、令和5年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があります。

適格請求書発行事業者の登録を受けるためには原則として消費税の課税事業者である必要がありますが、経過措置として令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。


以上、インボイス制度による免税事業者への影響について、簡単に説明させて頂きました。詳しくは担当者にご相談ください。

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