生命保険契約の契約者変更による課税関係
生命保険契約の契約者を変更した場合には、いつどのような課税関係が生じるのかを考察したいと思います。契約者変更の際には契約生命保険会社から税務署宛に「保険契約者等の異動に関する調書」が提出され、所轄税務署は確実にその変更内容を把握していることに留意する必要があります。
1. 個人→個人への変更の場合…契約者変更時ではなく、保険金・解約返戻金が支払われた時に課税関係が生じます
保険種類:終身保険
被保険者:父親
受取人:長女
例:契約者:父親が保険料を8年支払った(800 万円)後→長女に変更して、長女が保険料を2年間支払った(200万円)場合
保険金:1億円
解約返戻金:500万円
① 保険契約後10年経過して、被保険者が死亡した場合の課税関係
保険金のうち8,000万円は相続税のみなし相続財産として課税されます。
また、残りの2,000万円は長女の所得税(一時所得)が課税されます。
② 保険契約後10年経過して、保険契約を解約した場合の課税関係
解約返戻金のうち400万円は贈与税が課税されます。
また、残りの100万円は長女の所得税(一時所得)が課税されます。
2. 個人→法人、法人→個人への変更の場合…契約者変更時に課税関係が生じます
① 契約者を個人→法人に変更した場合
保険種類:終身保険
被保険者:社長個人
契約者:契約から20年社長個人→法人に変更
既払込保険料:2000万円
解約返戻金相当額:1000万円
a. 無償譲渡の場合
法人:保険積立金1000万円 / 雑収入1000万円
社長個人:無償で法人に贈与したこととなり、課税関係は生じません。
b. 有償譲渡の場合
法人:保険積立金1000万円 / 現預金1000万円
社長個人:法人に対して、解約返戻金相当額で譲渡したこととなり、所得税(一時所得)が課税されます。
② 契約者を法人→社長個人に変更した場合
保険種類:終身保険
被保険者:社長個人
契約者:契約から20年法人→社長個人に変更
保険積立金:3000万円
イ. 低解約返戻金型保険でない場合(解約返戻金相当額が2500 万円の場合)
a. 無償譲渡の場合
法人:役員賞与・役員体側給与2500万円 / 保険積立金3000万円
譲渡損失500万円 /
社長個人:給与課税されます。
b. 有償譲渡の場合
法人:現預金2500万円 / 保険積立金3000万円
譲渡損失500万円 /
社長個人:契約者変更時は課税関係が生じません。保険金支払時に所得税・相続税が課税されます。
ロ. 低解約返戻金型保険である場合(解約返戻金相当額が2000 万円の場合)
a. 無償譲渡の場合
法人:役員賞与・役員体側給与3000万円 / 保険積立金3000万円
社長個人:給与課税されます。
b. 有償譲渡の場合
法人:現預金3000万円 / 保険積立金3000万円
社長個人:契約者変更時は課税関係が生じません。保険金支払時に所得税・相続税が課税されます。
3. 法人→他法人への変更の場合…契約者変更時に課税関係が生じます
保険種類:終身保険
被保険者:社長個人
契約者:契約から10年A法人→B法人に変更
保険積立金:3000万円
解約返戻金相当額:2000万円
a. 無償譲渡の場合
A法人:寄附金 2000万円 / 保険積立金3000万円
譲渡損失 1000万円 /
B法人:保険積立金 2000万円 / 受贈益2000万円
b. 有償譲渡の場合
A法人:寄附金 2000万円 / 保険積立金3000万円
譲渡損失 1000万円 /
B法人:保険積立金 2000万円 / 受贈益2000万円